虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より
本間興業にしてやられる(3)
当時、ボリショイサーカスで莫大な利益を上げていたが、ほかの興行で大きな赤字をかかえて資金繰りが苦しくなった時期があった。呼び屋の世界ではこんなことは日常茶飯事である。 しかし彼らは「中国のスパイらしい」という噂を吹聴して、ソ連政府の信用を崩しておきながら、実にみごとなタイミングで、「おまけに神彰の会社は資金繰りに窮している。このままでは次回からのギャラは払えないだろう」とあおったのだ。当初の金銭目的ではない時代から徐々に、変化してきた時代だ。彼らへのギャランティーは相当額まではねあがっていた。支払いが滞ることに対して不安をつのらせてしまったのだ。
ついに、ソ連側の担当者は秘密裏にアートフレンドアソシエーションの財務状況を調べ、本当に資金繰りに苦しんでいる状況を上に報告してしまう。そして、当然、現在の契約条件を上まわる好条件を提示している本間興業のほうに契約を乗りかえてしまったのだ。
まあ、いまにして思えば敵ながらあっぱれ、というほかないだろう。呼び屋の世界に生きるうえではこんなことも覚悟のうえなのだ。怒りくるう神を尻目に、本間興業はその後、毎年ボリショイサーカスを呼んで稼いでいった。
その後、本間誠一が亡くなり、本間興業も解散して、現在では元社員たちがこのボリショイサーカスの興行を細々と続けている。
・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く
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— 康芳夫(国際暗黒プロデューサー) (@kyojinkouyoshio) November 3, 2021
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