原理としてのマゾヒズム<家畜人ヤプー>の考察:安東泉・・・『血と薔薇』1969年 No.4より
「ノーマルな性」に特に顕著な偏向を示したのはトルストイである
ストイシズムの伝統は牢固として抜きがたい。彼がモーパッサンの『べラミ』を「猥雑な書」としてきめつけた見地からすれば、ノーベル賞のわが川端康成なぞ、言語道断の不倫の書ということになろう。事実川端作品の『千羽鶴』の翻訳が、不倫の書として南ベトナムで発禁になったことは新聞の報ずるところであった。
ともあれ、現在においては、トルストイほどの厳格さで性を律する意見はほとんど聞かれない。とはいいながら、トルストイによる「ノーマルな性」とは、結局子供を産むことに向けられた性である、という基本路線は今も変わらず、「ノーマルな性」への一般的概念となっている。大ざっぱにいえば、したがって、それに反する「不自然なもの」がアブノーマルということになる。
・・・原理としてのマゾヒズム<家畜人ヤプー>の考察:安東泉:『血と薔薇』1969年 No.4より・・・次号に続く