沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く

沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く(1)

<最大の奇書>の仏語訳を実現

二◯◯六年には「サド賞」を受賞する

一九五二年に刊行が始まった伝説的なSM雑誌「奇譚クラブ」(七七年に休刊)---。団鬼六の代表作『花と蛇』が連載されていたことでも知られるが、四半世紀つづいた歴史の中で、もっとも人々の注目を集め、問題作と言われたのが、作家・沼正三の著した長編SF・SM小説『家畜人ヤプー』であった(五六年より連載開始)。内容をひと言で表わせば、「日本民族が外国人の性的奴隷に堕ちる物語」とも言えるが、マゾヒズムや汚物愛好に関して極限まで描ききっただけでなく、日本の神話や古典に根ざしたストーリーは、三島由紀夫や澁澤龍彦、寺山 修司らによって絶賛され、日本の戦後文学の中で異彩を放つ<最大の奇書>として位置づけられるようになった。七〇年に都市出版から単行本化(二八章まで)された際には、内容をめぐって、右翼が版元に抗議に押し寄せ、警察が出動する騒動も引き起こした。

その後、『家畜人ヤプー』は、角川文庫版を経て、一九九二年、太田出版より上・中・下巻が刊行、全四九章が完結した。現在は、幻冬舎アウトロー文庫より、装いを新たにし、全五巻が刊行中である。

この物語のフランス語版を自ら企画し、三年前に刊行した(desordress,Laurence Viallet社刊)、出版プロデューサー、ローレンス・ヴィアレ氏が、先月来日した。なぜヴィアレ氏は、五十年以上前に日本の作家によって書かれた小説に惹かれたのか。出版にいたるまでには、どのような経緯があったのか、お話しをうかがった。(編集部)

・・・次回更新【沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く】に続く