猪木・アリ戦(6):アリの深い警戒心と猪木の純粋な動機・・・3
つまり、これが「世紀の凡戦」の真相だ。やはり純粋にプロレス対ボクシングを極めようとした猪木の思いが、この結果につながったのだ。要するにアリたちが最初から想定していた「ショー的」な闘いなら、もっと観客を沸かせるようなファイトができたにちがいない。しかしそれを拒否した猪木にとって、相手が黄金の腕を持つ世界のアリでは、対等なルールにもとづいた真剣勝負としての異種格闘技の死闘の成立も、またむずかしかったのである。いってみれば碁と将棋の対決に近い。ルールが違いすぎるのだ。
そういった意味で猪木の純粋さは興行的には失敗したが、そのかたくななまでに純粋な想いは十分評価できる、私はいまでもそう信じている。ちなみに、この時はじめたアリキックと呼ばれる戦法は現在のプロレス界でも使われる技として定着した。
私はこの「猪木・アリ戦」を陰で支えるアドバイザリーコーディネーターとして間近に見ながら、「俺だったらこうするけどな」とさまざまな思いをめぐらせていた。
・・・猪木・アリ戦:了