最強対談:沼正三 VS 団鬼六(STUDIO VOICE Vol.267 MARCH 1998より)
最強対談:沼正三 VS 団鬼六 スーパーバイザー・沼正三全権プロデューサー / 康芳夫・・・9
---日本文学に於けるマゾヒズム的な流れがある気がするんですけど。
沼 安岡章太郎さんみたいに。『花祭』っていう小説があるんですけど、汲み取り便所のことをあれほど詳しく書いた小説があろうかという(笑)。
康 日本文学史に於けるマゾヒズムの系譜っていうね。戦前に谷崎さんがいて、それで遠藤がいて安岡がいるっていう。
沼 『ロビンソン漂流記』をS派の文学として、スウィフトからM派だという分け方があるんです。つまり中華思想という、自己が世界の中心であるという天動説ですね。それが『ロビンソン漂流記』の場合には白人中心で黒人は従僕でしょ、人間は必ず冒険に行っても生き残るんだという、非常にS的に言えば前進的、開発的、冒険的でね、自己中心を拡げていくという傾向があるんですけど、スウィフトになりますといろんな国を巡って、最後には馬の国に行って人間が“ヤフー”と呼ばれる一番最下等な生き物になっている国にたどりついて終わりですよね。本当に面白いのはプロブディングの国に行きますとね、小人になっちゃうんですよ。だから巨大な山のようなおっぱいにぶら下がったりとか、ナイヤガラのような音を立てて女がオシッコをして、その中で溺れそうになったりとか。『ロビンソン漂流記』が出てから7年後に『ガリバー漂流記』を発表しているんですよ。これはS派に対するM派の挑戦というか。そういう流れですね。
・・・次回更新に続く
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