真相は藪の中だって!?冗談じゃない。倉田氏よ、貴兄の唯一最大のミスは、代理人に己の人格まで譲り渡したことだ

『諸君!』昭和57年(1982年)12月号:「家畜人ヤプー」事件 第二弾!倉田卓次判事への公開質問状:森下小太郎

前号で私は、あの三島由紀夫が絶讃した戦後の一大奇書『家畜人ヤプー』の作者・沼正三はあなた、東京高裁判事・倉田卓次氏であると指摘した。

そうしたところ、思いもかけず多大なる反響があらわれたことは、あなたもすでにご承知と思う。その一つは、あなたの友人と称する天野哲夫氏(新潮社社員)が「実は私が『ヤプー』の作者だ」と名乗りをあげたことである。ために、新聞・雑誌・テレビは揃いも揃って「真相は”藪の中”」式の報道に終始し、なかには”ヤプーの中”などとシャレで誤魔化したところさえあった。

しかし、断じて”藪の中”などではない。真実はただ一つ、『家畜人ヤプー』の作者・沼正三は倉田判事、あなたなのだ。

天野氏の発言やマスコミの報道の仕方によって、私が真偽も定かならざる物を書いたと思われるのは心外である。前稿に私の意はすべて尽くしたつもりではあるが、ここにあらためて「沼正三=倉田卓次」説を補強・論証し、右の誤解を解くことは、私の責務でもあろう。

さらに、『諸君!』編集部や私のもとに寄せられた反響の中には、私の執筆動機についてとやかくいうものが少なからずあった。「なんで今ごろ沼正三の正体を暴露する必要があるのか」というわけだ、この点についても縷縷述べるつもりだが、それはとりもなおさず、私からあなたへの呼びかけでもある。

テレビの画面であなたは、押し寄せた報道陣にうろたえ、

「関係ありませんッ、関係ありませんッ」

と絶叫した。そんなあなたを見るにしのびないからこそ、こうして再び筆を執った次第である。

・・・次号更新【『諸君!』昭和57年(1982年)12月号:「家畜人ヤプー」事件 第二弾!倉田卓次判事への公開質問状:森下小太郎・・・連載19】に続く