伝説の雑誌『血と薔薇』アーカイブス:黄泉(モルグ)からのオルグ/M・モンロー解裂:木下成人・・・2

血と薔薇 4号 1969.No.4 製作=康芳夫より

血と薔薇 4号 1969.No.4 製作=康芳夫より

肉が散文ならば、血は優雅にふまれた韻文で、暴力は権威づけを欲する画商の揉み手だ。骨は風化に馴れて、ひとつ、思惟の独善である。古い時代の呪文はどこかで弾きだされて虚空にちらばり、ふん、マリリン・モンロウは古典的大往生を知らなかったのさ。

マリリン・モンロウは、受話機を握ったまま死を迎えた。

死のことばは、まぎれもなく敗北のことばであり、死と敗北には、勝者にむかってなされる、また生者に対してなされる儀礼のことばがあるはずだ。

マリリン・モンロウの最後の秘儀が、受話機と全裸と併列されてのおわりであることを考えると、下民として、敗れた儀礼を全うし、ふん、マリリンは古典的大往生を知らなかったのさ。

敗北者が、勝者にむかってことほぐのは、われ男具那にも験しがある。

まだ、小碓命(をうすのみこと)とよばれていたとき、熊曾建兄弟を討ちに行った。

だいたいわれ男具那は、兄、大碓命を、教えさとすためだけで、とっつかまえてつかみひしぎ、こもにつつんで投げ棄てたことでもわかるように、建く、荒い情が、父景行を恐惶させていたものだ。その、われ男具那が童女になりすまして、兄建をまず討った。

弟建が逃げだしたのを、背をとっつかまえて、剣を以て尻より刺し通した。弟建は、その刀を、頼む、動かさないでくれ、特に言いのこしたいことがある。われわれ兄弟は、建く強いことでは並ぶ者ないと思っていたのに、大倭国には、その上をいく建き男がいたのか。その故を以て、弟建であるわれは、御名をたてまつる。これから後は、倭建御子と称え申すがよろしかろう。

そのようなわれ、男具那である。

なんのマリリン・モンロウ、百十七ポンド、五・五フィート、バスト三十四、ウエストニ十三、ヒップ三十七、死体番号八一一二八、このような死肉の一塊、うすい恥毛をかきわけて、指先三本のめりこませ、宙にうかせて無限の飛翔。

マリリン・モンロウのからだは、頭骨を下に、双肢を上に、ゆるやかに回転しながら、太陽の絨毯、諸星座の照明の中で、神秘のポーズをとる。

われ男具那の指先は、ふるえるほどの冷たさに、死なる歓びを讃える。

死肉と死肉の交接は、まさに邪まなるが故に、かならず、かならず、果たすべし。

・・・次号更新に続く