死者の国から呼び戻された幽霊・・・・・・(3)
私は、あくまでも代理人であった。だが印税の受取人は当人でなく代理人の私であることに、矢牧君はいささかの疑義も差しはさまなかった。私が売込みに行ったのでなく、私はひっそりと、一出版社のサラリーマンとして勤め始めて四年目、無名の男にすぎない。ツテを求め、コネを頼って訪ね当ててきたのは先方様である。私自らが名乗り出たわけではない、いっさいは矢牧君のこちらへの信頼と、哀訴に打たれてのことである。ついでにいえば、今回、最大級の賛辞を『ヤプー』に献げてくれている『諸君!』であるが、この作品は、この頃と前後して、当時、文藝春秋社の編集者であった恩田貢氏が同社へ持ち込んだはずである。一顧だにされず、原稿コピーは恩田氏につき返された経過がある。その文藝春秋が、何を今さら、あれほど大袈裟に『ヤプー』を持ち上げるのか、何ともアホらしいというか、タメにする賛辞としか言いようがないではないか。---さて、閑話休題---。
・・・次号更新【「家畜人ヤプー」贓物譚(ぞうぶつたん)・・・『潮』昭和58年(1983年)1月号より・・・連載11】に続く