プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹
”第三帝国公認預言者”だったノストラダムス(1)
翌日、中田は、川尻博士を紹介してくれたK.H氏に連絡した。
「やあ。博士と会ったんだって。どうだった?」
「すごいというか、突拍子もないというか・・・・・・。まだ頭の整理がつきませんよ。これが立派な精神科医の言葉でなかったら、発狂した人間の妄想としか思えませんね」
K・H氏は、さもおかしそうに笑った。
「あはは。まあ、そうだろうな。・・・・・・あの人自体、相当に偏執狂的なところがあるからねえ。精神科医というのは、毎日患者と接しているから、その影響で知らず識らずのうちに自分も常軌を逸してくるものでね、その度合いは良心的な医師ほど大きい。その中でも川尻博士はズバ抜けてるけど」
「じゃ、K・Hさんは、博士のこの研究は、妄想の産物だと考えてるんですか?」
「全部がそうだとは言わないよ。ヒトラーがノストラダムスの予言に従って戦争のシナリオを書いた---というのは、博士の言うとおりだと思う。彼が占星術師や魔術師、神智学者など、オカルトを弾圧し、それに関連した書を焼き捨てさせたのは知っているだろう?」
「ええ。焚書事件というやつですね」
「そう、それなのに、ノストラダムスだけは別格扱いで、彼には”第三帝国公認予言者”という肩書を与えているんだ。ヒトラーは、ノストラダムスの予言詩九〇〇編余りを全部暗記していた---という側近の証言もある。ヒトラーがノストラダムスをどれだけ信頼していたか、このことでも分かるだろう。だけど、ぼくはヒトラーは、わりと単純に考えていたんじゃないかと思うんだ」
「というと・・・・・・?」
・・・・・・・・・次号更新【”第三帝国公認預言者”だったノストラダムス(2)】に続く