『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

”私はα(アルファ)でありω(オメガ)である”に隠された意味(1)

精神科医・川尻博士はさらに、前人未到の分野に想像のメスを入れていく。

「ゲッベルスはつねづね『宣伝とは単純化の技術である』と言っていた。だから、彼の言葉は難解ではない。注意深く彼の演説に耳を傾けて、その言葉の意味どおりに受け止めていくと、ゲッベルスは、どんな時も嘘を言っていないことが分かる。

敗北が目前に迫りくる時、彼は泰然として『敗北は勝利に変わる』と言い、『新し世界が、おぼろげながちその姿を見せてきた』と言い、『神の国を作るための役割を果たす人、それは私だ」と言っているんだな。その時点では理解できなかったことも、今、”ノストラダムス計画”が実行されていたことを知ってから聞いてみたまえ」

「なるほど、この戦争に敗北しても、それによって新しい国−−−神の王国たる第四帝国が近づいてくる、という予言の成就に近づくわけですから、信仰者の立場からは勝利なのですね」

「そうさ。対ソ戦で敗北した時、彼は、ラジオで正直にそのことを告げて、米英を驚かせたものだ。日本が大本営発表で嘘ばかり国民に伝えていたのとは大違いだよ。そうそう、ノストラダムス予言の第四章五六番、

−−−

勝利の後に激しい調子で

魅惑された心が静けさのうち

戦いによる血のような皇帝は演説をして

舌、肉体、骨を焼くだろう

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この詩が暗示するのは、ゲッベルスの一九四三年二月一八日の演説なんだ。これはドイツ国民に総力戦遂行の決意を呼びかけた演説なのだ・・・・・・」

・・・・・・・・・次号更新【”私はα(アルファ)でありω(オメガ)である”に隠された意味(2)】に続く