康芳夫

ビジネス系ベストセラーはゴミ箱へ捨てろ

出版界が不況と言われるようになって久しい。ITや携帯電話の出現に押されて構造的な不況業種になってしまったのだ。

そんな出版の世界にもベストセラーいう花は相変わらず、咲き続けている。

しかし、最近のそれらの花は香りがあまりしない。匂いを嗅いで軽くめまいを感じるような艶や色気がないのだ。それはベストセラーの上位にくる多くの本が、世知辛い世相を映してか、ビジネス系の実用の本ばかりであるからである。

生きる上で「これが答えだよ」といった人生マニュアル、ビジネスマニュアル的な書物が多いのである。人生で成功するにはどのような行動をとればいいか、ビジネスで成功するにはどのようなビジエススキルを身につければいいか、対人関係をうまくコントロールするためにはどのようなテクニックが必要か、不安をなくしハッピー生きるにはどんな行動や考えを持つといいか、そんな類いのテーマの本が飽きもされずに買われている。

別に私はその手のものをわざわざ否定もしないが、肯定もしない。ただ疑問に思うことはある。そういうものを読んであなたの人生はどれだけ変わるのか、どれだけ楽しいものになるのか、ということだ。もっとも、そうした本を読んでいる人たち自身も本当のところは、何か変わるということはそれほど期待していないのかもしれない。

でもそんな姿勢がまさに人生を退屈なものにしているのではないか。

・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋