『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

キリストの役割を与えられたゲッベルス(2)

プロパガンダの天才・ゲッベルスとの出会い

「ゲッベルスもまた優秀な頭脳の持主だったから”ノストラダムス計画”のことは、実体の傍にいれば自然に分かったと思うが、自分がキリストの役だと知ったのは一九三八年になってからだろう思う。というのは、この年、ゲッベルスは女優リダ・バーローヴァと恋愛問題を起こし、妻のマクダから離婚訴訟を起こされそうになったりして、ヒトラーにえらく叱られたんだが、不思議にもヒトラーに心酔しきっていたゲッベルスが、この時ばかりはゴネているんだ。たぶん、『十字架にかけられてキリストになるのはごめんだ』と思ったからじゃないか。

しかし、ここで実体にすべてを知らされて肚を据えたのだろう。それ以後、ゲッベルスはノストラダムス予言を成就させる方向へ歴史を動かすことに遭進する」

「すると、彼はヒトラーの片腕以上の存在だったんですね」

「そうだよ。ダブルを使うようになった後の”実体”のヒトラーは、しだいに後方へ退いて、ゲッベルスが前面へ出てきた。特に一九四一年六月二二日の対ソ戦開始からは、彼が影武者(ダブル)のヒトラーを操る形で奮闘した。実際、これ以降、第二次世界大戦は”ヒトラーの戦い”というより”ゲッベルスの戦い”といったほうがいいくらいだ。もちろん、シナリオはヒトラーが書いた”ノストラダムス計画”だがね」

・・・・・・・・・次号更新【ソ連侵攻は予言どおり「かに座」の日に開始された】に続く