かつて35年前、立花隆、麻原彰彰晃等が愛読し、週刊プレイボーイ連載後、祥伝社より出版された『滅亡のシナリオ』精神科医 川尻徹 著が、いよいよ【家畜人ヤプー倶楽部】全地球を睥睨するスフィンクス『康芳夫』 official HPで連載開始。当時、満天下をうならした快(怪)著。乞うご期待。
プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著) 精神科医 川尻徹
滅亡のシナリオ(1)
いまも着々と進む1999年への道
これが、”麻原オウム”幹部必読の教科書だ!
復刻にあたって
康 芳夫(こう よしお)
本書は”麻原オウム”に決定的な影響を与えた一冊である。麻原彰晃(しょうこう)は、本書でヒトラーにイカれ、ハルマゲドンに取り憑(つ)かれたのである。
では、本書と麻原の思想の関連性をどう考えればよいのか。立花隆(たちばなたかし)氏が「週刊文春」誌上で詳細な分折を行なわれたので、まず、それを紹介しておきたい。
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「なぜ(麻原)は、ハルマゲドンを自ら起こそうとするなどという無謀な試みをしたのか。
そこのところがずっと謎だったのですが、最近一冊の本を読んで、謎がやっと解けた思いがしました。それは川尻徹(かわじりとおる)という精神科医が書いた『滅亡のシナリオ』というヒトラーについて書かれた本です。麻原はこの本の熱心な読者でした。この本によると、ヒトラーの行動はすべて、ノストラダムスの予言を実現するために意図的になされたもので、第二次大戦を起こしたこともそうなら、戦争に敗北したことも、予言実現のためにわざとそうしたのだというのです。ナチスだけでなく、ノストラダムスの予言を実現するべく動いてきた人々が歴史の陰にずっと前からおり、その人々の努力によって、ノストラダムスの予言はかくも当たりつづけているというのです。(中略)
麻原はどうもこの説を信じてしまったようなのです。上九一色(かみくいしき)村のオウムの子どもたちが保護されたとき、子どもたちがみんなヒトラーを偉大な人物と信じており、しかも死んだというのは嘘で、実はまだ生きていると信じているという話が驚きをもって報じられました。オウムとヒトラーがどこで結びつくのかわからなかったのですが、この子どもたちが教えられている説が、川尻説と同じなのです。もう一つあります。麻原がヨハネ黙示録とハルマゲドンについて論じた『滅亡から虚空へ』という本がありますが、その本の一章がヒトラーについてさかれています。それがほとんど川尻説の受売りなのです。オウムが強烈な反ユダヤ思想のとりこになっていることも、ヒトラーの影響と考えれば納得がいきます。
麻原が書いたものをずっと読んでくると、麻原が本気でノストラダムスの予言を信じているというおとがわかります。ヒトラーもそうでした。本気で信じていたから、その予言通りの行動を取ったのだと川尻説はいいます。麻原もそうだったのではないでしょうか。自分の予言が外(はず)れると困るからハルマゲドンを起こそうとしたのではなく、ノストラダムスがそう予言したからには、歴史はその通りに動くにちがいないし、また自分は、歴史をそのように動かす歴史的使命を与えられていると思い込んだのではないでしょうか」
(「週刊文春」平成七年七月二十七日号より)
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実は、麻原は一時期、私の門下生であったことがある。詳しくは「解説」に譲るが、麻原二〇歳の頃のことであった。さらに、本書は著者である故・川尻氏よりプロデュース権を委任され、私がプロデュースしたものであり、麻原と私は因緑(いんねん)浅からぬものがある。
言うまでもなく、”オウム事件”はわが国の犯罪史上、類例を見ない凶悪・凶暴・卑劣なものであり、その中心人物である麻原彰晃は一日も早く極刑に服すべきであることは論を俟(ま)たないが、オウム教の背後に無気味に横たわる巨大なブラックホールの解明には、今後も多くの時間と優(すぐ)れた英知を集結しなければならない。とすれば、本書の持つ意義はきわめて深いものがある。
と同時に、大犯罪の”教科書”となったという資料的価植だけではなく、著者の川尻氏の洞察力は天才的であり、本書は今も”文明批判の書”として光彩を放ちつづけているのである。
最後に一言、付け加えておきたい。世上に、いわゆる諸刃(もろは)の刃(やいば)という諺(ことわざ)があるが、アインシュタインの相対性原理は、宇宙の構造を解明する大発見であった。しかし、これはまた核兵器という怪物をも生み出したのである。本書をお読みになって、どんな風景が見えるかについては、読者それぞれの判断に委ねたいと思う。
平成七年十一月二五日
まえがき
一九四五年、ヒトラーの第三帝国は崩壊した。だか、その全貌はいまなお謎に包まれている。それゆえヒトラーに関する研究は多くの人を惹(ひ)きつけ、戦後おびただしい書物が上梓(じょうし)された。
精神医学を研究する傍(かたわ)ら、これらの書物を読み進むうち、私は多くの歴史学者が指摘する”ヒトラーの不可解な戦略”について、精神医学上の観点も交(まじ)えて、独自の考察をするようになった。
たとえば、第一次大戦後、巨額の賠償を迫られ、疲弊(ひへい)しきったドイツを、ヒトラーは短時日のうちに再び世界の列強にまで押し上げた。しかし、その後、またしても恐るべき消耗を伴う大戦争を、英仏ソという超大国相手に挑(いど)んだのは、なぜか。また、戦略の天才ヒトラーが、英仏軍をダンケルクに追いつめながら、突然、前進停止命令を出し、”ダンケルクの奇蹟”を敵にプレゼントしたのは、なぜか。さらに、ソ連軍を相手に東部戦線で激突していた一九四一年、アメリカに対し、宣戦布告するという愚挙に出たのは、なぜか・・・・・・。
これらの謎を追求するうち、私はヒトラーの巧妙かつ壮大な計画に気づいた。それが”ヒトラーのノストラダムス計画”である。
とろで、ノストラダムスは、第三帝国における、いわば公認予言者であった。このことは、宣伝相ゲッベルスが、ノストラダムスの予言詩集『諸世紀』を小冊子にまとめ、ドイツ国民に配布したという史実からも明らかである。そこで私は、ノストラダムスとヒトラーを結びつけて研究してみることにした。すると、ヒトラーをめぐる数々の謎が解けるばかりか、ヒトラーの驚くべき陰謀が見事に浮彫りになってきたのである。
つまりそれは、ノストラダムスの予言どおりにドイツが敗北することを知リつつ、ヒトラーは第二次世界大戦を起こしたという恐るべき計画である。しかもその目的は、今世紀末に人類を滅亡させるための破壊手段の開発にあった。詳細は本文に譲るが、現に当時のドイツは、核兵器や宇宙兵器など、現在、人類の存続を根底から脅(おびや)かす超近代兵器の理論的開発はすでに終え、そればかりか実用化を着々と進めていたことは周知の事実である。
では、なぜヒトラーは、この恐るべき”滅亡のシナリオ”を押し進めたのだろうか。実は、ここにこそ最大の謎があり、私が本書で最も力説したいところなのである。
本書は、この私の仮説を裏付けるべく、週刊プレイボーイ編集部と一体になって追求した結果、生まれたものである。いつの日にか、私のこの仮説が実証されることがあるとするなら、私のこの試みもまた、無益ではないと信じている。
一九八五年一月
川尻 徹(かわじり とおる)
・・・・・・・・・次号更新【1章 いま明かされる”ノストラダムス計画”】に続く