やはりヒトラーには影武者(ダブル)がいた!

『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

「どうも、ソ連のやりかたは相当ズサンだったようですね。なぜ、アメリカやイギリスの連合軍がヒトラーの遺体検証に参加できなかったのですか?」

「ヤルタ会談でルーズベルトとスターリンの間に『ベルリンにはソ連が先に進駐する』という取決めがされていたんだ。だから、連合軍はベルリンでソ連が掠奪と暴行をほしいままにしてるのを静観するしかなかった。連合軍がベルリンに入れたのは二ヵ月後だったが、その時もまだ、ヒトラーの死は確認されていなかったから、当然、彼らもまた必死になってヒトラーとエバ・ブラウンの遺体を探した。が、見つけることはできなかった・・・・・・」

「トーランドは、UCLAのライダー教授の研究を挙げ、ソ連軍が発見した死体の一つをヒトラーのエックス線写真と照合すると、歯列が一致した、と言ってますね」

「だが、『20世紀最後の真実』で取材した落合信彦氏によれば、氏自身、ライダー教授に取材して、照合が行なわれたのはスケッチだったと言っている。それも生前、ヒトラーの歯を治療したプラスキーという歯医者が記憶をもとにして描いたというやつだ。ソ連のほうの記録だって怪しいもんだろう。ソ連は、戦後二三年目にそれを公開し、ライダー教授はそれとブラスキーのスケッチを照合したというんだ。信用がおけるかね」

「そうですねえ。一九八四年、ロス郊外で発見されたジェーン・ドゥ88なる死体が、三浦和義氏をめぐる疑惑の渦中で行方不明になっていた白石千鶴子さんにほぼ間違いない---と思われている時も、ロスの検視局は『スケッチじゃだめだ。レントゲンでないと判断は下せない』と強硬に言い張って、日本側に資料を要求していましたものね・・・・・」

「ところが、ヒトラーの場合、もし万に一つでも歯列の資料が一致していたとして、それが影武者(ダブル)のものだったとしたら、どうなる?影武者のデータと、影武者の死体とは一致するのは当然だ、だいたい、ヒトラーは自分やエバ・ブラウンもふくめ、ナチス高官のカルテ、レントゲン写真、治療記録の隠匿命令を出して、公式なものは残っていないというありさまなんだよ」

中田は考えこんだ。

「じゃ、四月三〇日にピストル自殺した男は、実際はヒトラーの影武者かもしれないですね・・・・・・。だって確実な証拠というのが、全然ないわけですから」

落合信彦氏も『20世紀最後の真実』の中で、こう書いている。

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「ベルリン陥落寸前に影武者(ダブル)が自殺するか、または殺される(たぶん、後者だろう)。そして、どこからか銃弾で死んだ女性の死体を運んでくる。二人を並べてガソリンをかけ、火をつける。この間、本物のヒトラーとエバ・ブラウンは、スタンドバイ(脱出救援)部隊のひとつを使っていずこかへ脱出する・・・・・・決定的ではないが大いに可能なことである」
(同書、一六六~一六七ページ)

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もちろん、ヒトラーが影武者(ダブル)を使っていたという説は、何人もの歴史家が語るところである。中田も少年時代、本当のヒトラーは一九四四年七月二〇日の暗殺未遂事件の時に、実際に死んでしまっていて、それから後の戦争は、偽のヒトラーが指揮した---という映画を見たことがある。

「ヒトラーがダブル---つまり影武者をおいていたということは、充分に考えられる。というのは、暗殺や誘拐を恐れて、当時の要人はみんなダブルを用意していたからだ。チャーチルも、そうだった。あの慎重で用心深いヒトラーが、ダブル操作を行なわなかったはずがない」

川尻博士は、そう言いきるのだった。

・・・・・・・・・次号更新【ダブル操作の証拠---肖像写真】に続く