実体ヒトラーにはない数々の特徴

滅亡のシナリオ:実体ヒトラーにはない数々の特徴

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

「よし、次はイギリス首相チェンバレンと並んで一緒に撮られた写真だ」(写真⑩)

「やはり外斜視があります。・・・・・・でも、首は曲がっていませんよ」

「それは、カメラマンに注文をつけられたんじゃないかな。そのかわり体全体が左に傾いていないか?」

「ほんとだ。右肩が上がっていますね」

「つまり、首を曲げないようにすると、今度は躯幹---胴体部分が左斜めに傾いてしまう癖があるわけだ。そうすると、右手で左手を押さえているのは、そのねじれを調整しようとしているのではないかと、医者なら考えたくなるところだね」

「どうして、こうやってねじれるんですか」

「医学的に言うと複視調節というやつだ。外斜視のせいで、正立して物を見ると対象物が二つに重なって見えてしまう。それを解消するため、体を傾けるわけだ。斜視の人には多かれ少なかれ見られる身体症状だな。・・・・・・では次。これは、ベルヒテス・ガーデンでエバ・ブラウンと一緒にいる時、うたた寝をしたところだ」(写真⑪)

「寝ているせいか、威厳が感じられません。よくカメラマンが写せたものですね・・・・・・」

「そうだな。私がヒトラーだったら、こういった写真を撮ったカメラマンは処罰ものだ。この写真のヒトラーは、エバ・ブラウンの外見から見て一九四三年ごろじゃないかと思うんだが、唇にしまりがないね。知的なもの、意志力といったものが欠けている。このベルヒテス・ガーデンでは、写真のヒトラーは、突然怒りだしたり、高笑いしたり、気分の変化が激しかったそうだ」

「はあ」

「その次は一九四〇年六月、フランス降伏の際、パリのエッフェル塔を背景にして撮影したものだ」(写真⑫)

「やはり軍帽が右にずれてますね。斜にかまえたようになっているのは、胴体が左にねじれているということですか」

「そうだね。それと頬のあたりにたるみが出て、ややしょぼくれた感じがするのは、老人性変化が出てきているせいと思われる。勝ち戦の最中なんだから、もっと意気揚々としていいはずだ。しかも不思議なことに、ヒトラーはこの時初めてパリにやってきたのにもかかわらず、側近のシュペーアを率いて、パリのあちこちを懐かしそうに歩きまわったそうだ・・・・・・」

・・・・・・・・・次号更新【では、この写真は何を意味する?】に続く