『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

ハウスハウァー教授から学んだ影武者(ダブル)操作(2)

「私が考えるに、実体のヒトラーにダブルの操作方法を教えたのは、将軍からミュンヘン大学の地政学教授となった、有名なハウスハウァー教授だったと思う。ヒトラーは一九二三年一一月のミュンヘン一揆で失敗し、実刑判決を受けてランツベルク刑務所に服役していた時に、彼と会っている」

「ランツベルク刑務所とは、ヒトラーが『我が闘争(マイン・カンプ)』を書いた所ですね」

「そうだ。ヒトラーが真のフューラーとしての精神形成を行なったのは、この刑務所の中だったと言われている。ハウスハウァー教授はチベットをはじめ、中央アジアの各地を訪ね歩いているが、日本にも長期間滞在しているんだよ」

「そうなんですか」

「うむ。第二次大戦後、彼は指導者としての責任をとって自殺したが、それは日本の武士道にのっとった割腹自殺だった。それくらい日本の文化に感化されていた男なのだよ。実は、その彼が日本で、ある”秘密教団”に加入したというんだな。私は、たぶん高野山あたりの密教寺院だろうと思うがね。そして、実体に”魔法の封印”を解いて教えたといわれている。つまり、何か会得した秘法をヒトラーに伝授したというんだ。私は、その秘法とは、忍法や武田信玄が考案した影武者の操作法だと思う。忍法では義歯を用いた変身の術を開発していたからね。これでヒトラーは、ダブル操作を宣伝技術として導入することを決めたのではないかな」

「それで、異母兄のアロイスを起用したというわけですか」

「自分によく似ていて、しかも言うとおりに動く人間となると、血族の中から選ぶのが一番いいからね。私が写真などを鑑定した結果から判断すると、アロイスニ世は一九三〇年代の早い時期から、ダブルとして大衆の前に登場してきた。それと同時に、ナチ党の要人たちもそれぞれダブルを用意するようになった。やはり暗殺を恐れたからだ。さっき示したヘルマン・ゲーリングが姉のオルガを自分のダブルとして起用したのがよい例だ」

・・・・・・・・・次号更新【もう一人の影武者(ダブル)とは、いったい誰か】に続く