オリバー様ご一行七月ご来日:東京新聞(昭和51年4月20日 火曜日)
不合理ゆえに値打ちがある
猿人類のオリバー君と未知の巨大生物、ネッシー。この二つは共に科学的合理主義が圧倒的な支配力を持つ現代社会において、きわめて不合理で異質な存在感を持っている。私がオリバー君やネッシーに興味を持ったのもこの不合理な存在感ゆえである。そして不合理というものこそ私が考える虚人の本質につながるものなのだ。
人間だって実はきわめて不合理な存在である。合理性と効率性を至上の価値とする社会の在り方がそのことを見えなくさせているだけだ。私は不合理さこそ人間の本質だと思っている。
不合理であるから人生は面白いし、大いに楽しめるのだ。すべてが科学的に割り切れ、合理的に解釈できるのであれば、そんな世の中はただ退屈なだけだろう。
ところが、今の社会はその退屈な方へひたすら向かっているような気がする。
一つには科学主義的な考え方が万能であるかのような振る舞いをしていることが背景にあると思う。科学は人を全部数値に置き換え、何もかも合理的に解釈しようとする。しかし、人はそんな合理的な科学の枠からはみ出してしまう存在だ。
・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋
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石原慎太郎 総隊長 ネス湖探検隊:サンケイスポーツ(昭和48年8月11日)