都市出版社版『家畜人ヤプー』(1970年発行)

都市出版社版『家畜人ヤプー』(1970年発行)

ベストセラーの仕掛け人として---『家畜人ヤプー』:1

実は私の仕事の中に出版プロデュースという、もうひとつの分野がある。多くの人は私の「呼び屋」としての顔しか知らないが、実は出版界にも深くかかわっていた。それも単なるベストセラーをねらった商業出版ではなく、当時大きな話題を集めた奇想天外な本を世に送りだした。当時の出版界の常識では考えられない企画だといまでも自負している。結果は発行した本ほとんどが読者の興味や関心をおおいにそそり、大ベストセラーとなったのだ。

そのひとつは「偶像破壊シリーズ」。当時の大物政治家や企業家を何も臆することなく彼らのさまざまなタブーを書きだし、誰も手をつけなかった彼らの闇の部分を包み隠さず暴露したのだ。これには大きな反響があった。当時から日本の大マスコミはじめ、テレビや新聞などのメディアは肝心な部分では腰が引けている面が多々あったのだ。それをばっざり切り捨てたこのシリーズは画期的な衝撃を読者に与えたのだ。

当時、すごい勢いで勢力を拡大していた創価学の池田大作。そして神様と慕われた松下幸之助、共産党の独裁者宮本顕治・・・・・・。池田大作の暴露本を出版した時は事務所の電話がパンクするほどひっきりなしに鳴りつづけた。読者の猛烈な抗議の電話だ。NTTに電話番号を変えてもらっても一◯分後には鳴りだす。その執拗さは恐ろしいほどだ。後でわかったことだが、NTT内部に通報者がいたのだ。それを聞いて恐怖のあまりびびって辞める社員も続出したほどだ。しかし私は続いて児玉誉士夫も計画したが、さすがにこれまでのすさまじい反響におじけついて誰も書く人間がいなくなってしまった。最後に右翼評論家として名のとおっていた猪野健治氏が引き受けて書いてくれた。

そしてもうひとつが「戦後最大の奇書」としていまでも多くのファンに読み継がれている稀代の名作、『家畜人ヤプー』だ。この本の発行にはいろいろないきさつがあり、多くの人がからんでいた。作者もいまなお覆面作家のままで、その実像を知る人間は私以外はいない。私はいまでもこの作品は日本はじめてのSM小説として歴史に残る名作だと思っている。最近中国語訳(台湾・香港で発売中)も出て、中国語圏で大反響である。近日中に仏語訳も出版される。

・・・ベストセラーの仕掛け人として---『家畜人ヤプー』(虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より抜粋):続く