オリバー様ご一行七月ご来日:ギャラ1日300万円 初外遊 警戒も元首並みで・・・・
新しい人類を日本に連れてくる
一九七六(昭和五一)年七月、日が西に傾き始めたころ、羽田空港に着陸したフライングタイガー社の特別チャーター便のタラップにある一人の男が降り立った。
男の背丈は異様に低い。しかも極端な猫背だ。階段を降り始めると、せわしなく左右に体を揺らし、どことなくふわふわした歩き方をする。男が空港ロビーへ向かうと、そこにはゆうに一◯◯人を超すマスコミ報道陣が男を待ち構えていた。一斉にカメラのフラッシュがたかれ、記者たちは口々に大声を張り上げて質問を浴びせてくる。それをさらに大勢の見物人が押し寄せるように取り囲み、空港は蜂の巣をつつくような大騒ぎになった。
しかし男は帽子を目深にかぶり、表情が今一つよく見えない。時折、報道陣や野次馬たちに片手を挙げる仕草はするが、言葉は一言も発しない。男は大騒ぎする連中を尻目に用意された高級車に乗り込み、宿泊先のダイヤモンドホテルのスイートルームへと向かった・・・・・・。
この男の名は通称「オリバー」。世間やマスコミを大いに騒がせた「オリバー君」騒動の幕開けである。
・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋