『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

官邸地下壕で行なわれた”偽りの結婚式”(3)

「そういうことだ。また、それによってノストラダムスの予言が成就したわけだ。私が考えるには、実体のヒトラーは、最初、その役割を姪のゲリ・ラウバルにやらせようと思った。しかし彼女はひじょうに奔放な、現代ふうに言えばプレイガールだったので、聖なる乙女の役に不適だった。だから、やがて精神的に異常を示すようになり、最後には追いつめられて自殺してしまった。そこで、その代役としてエバが起用されたのだろう・・・・・・」

川尻博士が積み重ねた突拍子もない推理を聞かされ、頭が混乱して、まとまりがつかなくなってしまった中田だ。その時、ドアがノックされ、秘書らしき女性が食事を運んできた。気がつくと、いつの間にか日は山の向こうに消え、山間の精神病院には夕闇がひた寄せていた。博士のとほうもない推理を聞かされているうち、中田は時間の過ぎるのを忘れていたのだ。

「まあ、メシでも食っていきたまえ。話はまだまだ序の口だからな・・・・・・」

川尻博止は豪快に笑う。

(冗談じゃない。これ以上、荒唐無稽で奇妙きてれつな話を聞かされたら、おれは、このまま入院しちゃいそうだ・・・・・・)

中田は、ふと、そんな不安さえ覚えたことだった−−−。

・・・・・・・・・次号更新【3章 謎の”最終軍団(ラスト・バタリオン)”は実在した!−−−”第四帝国”建設のために組織された”影の人々”】に続く