小生メールマガジン『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』好評連載【虚業家宣言】official HP ヴァージョン連載を開始する(先行配信は小生メールマガジンにて)。
【虚業家宣言(1)】
第一章 プロローグ
◆来なかったのは『人民日報』だけ
ニューヨークのマンハッタンを私が歩いている。例によって私の一番好きなピンクのチャイニーズ・ドレスを着て。すると、男たちがまといつきながらささやく声が耳に入ってくる。
「プリティ、ヴェリィ・プリティ」
「フーズ・ヒー?」
「ビッグマウス」
「アリズブレソド」
「チャイニーズ?」
「ノー、ジャパニーズ」
私は三十六歳。国籍は中国にある。中国人を父に、日本人を母として生まれたハーフだ。
私が尊敬する東南アジア映画界の大立者・ランラソショー氏は、かつて新聞記者に、「あなたの財産はどのくらいあるか」と質問されたとき、「私は自分の財産を勘定するほどヒマではない」と答えてケムに巻いたというが、私も自分の財産を数えたことはない。財産、資産と呼ぶべきほどのものを何も持っていないからだ。
だが、私はこれまでに、初めのうちは“ボラ吹き"と馬鹿にされながら、世界中をアッと言わせたことを何度かやってきた。カシアス・クレイやトム・ジョーンズを初めて日本に呼んだのも私だし、ネッシー探検隊で世界中を騒がせたのも私だ。私は無一文に近い状態から、これらのビジネス、私の好む表現を使って言えば“フィクショナル・ビジネス"をやり遂げてきた。
何ひとつオフィシャルな肩書を持たない男として、これまでに、私ほど世界中のマスコミに取り上げられた男はいないだろう。アメリカの『ニューヨーク・タイムズ』、『タイム』、『ニューズ・ウィーク』、『プレイボーイ』、『デイリー・メール』、『ザ・ピープル』、フランスでは『ル・モソド』、『フィガロ』、『パリ・マッチ』、ドイツの『ウエスト・ドイッチェ・アルゲマイネ・ツァイトゥソグ』、『シュテルソ』、そしてソビエト共産党の中央機関紙『プラウダ』。何十万、何百万の部数を誇る世界的な新聞、雑誌が競って私のやったことを報道した。
冗談でなく、私のところへ取材に来なかったのは『人民日報』だけである。だが、今後私の計画していることが、次々と実現していけば、その『人民日報』でさえ、私のところへ飛んで来ざるを得なくなるだろう。
その日は意外に早く来るかもしれない。
・・・次号更新【『ニューヨーク・タイムズ』で大特集】に続く