大映京都撮影所:勝新太郎、モハメッド・アリ、康芳夫

『彼らは人肉で生きのびた』を映画化(4)

また、私は、ある映画のプロデュースすることも考えている。制作費は十億円を超え、完成すれば世界的にヒットはまちがいない。そんなうまい話をなんでハリウッドが放っておくものかと思われるだろうが、実は、ある理由があって、キリスト教国のプロデューサーでは不可能だろうと見られているのである。私は、その不可能だというところに魅力を感じるのだ。不可能というならやってやろうということである。

もうカンのいい読者ならおわかりかもしれない。昨年十月、ニクァラグァのラクビー・チームを乗せた飛行機がアンデス山中で遭難、死者の肉を食って生きのびたという事件があった。すでに、何冊かの記録も出版されている。この”飛行機事故ドキュメント”を映画化しようというのが私の計画である。

なぜ、ハリウッドのプロデューサーたちが手を出さないか。彼らはカソリック教会の反撃を恐れているのだ。たとえ完成したとしても、同じキリスト教徒として、非難が集中するのには耐えられない。しかも、それだけではなく、強大な権力を持つカソリック教会が全力を上げて、上映禁止運動に乗り出す恐れさえある。そんな分の悪い賭けは、やりたくないというわけなのだ。

私はこれに挑む。もし、カソリック教会が上映禁止という手を打ってきたら、裁判に訴える覚悟もできている。すでに『彼らは人肉で生きのびた』の著者とは映画化権のことで話し合いを始めており、五万ドルで合意に達している。

主演俳優は未定だが、できればチャールトン・ヘストン、リチャード・バートンクラスを考えている。監督候補の一人は篠田正浩氏。先夜、私が彼に電話したとき、篠田氏は言ったものだ。「うーん、悪魔の声だ。しかし、この件で電話をかけてくるとしたら、あなただけしかないだろうなあ」

やる気十分と見た。

・・・・・・次号更新【エピローグ:『石油に挑む』】に続く

虚業家宣言 康芳夫 虚業家宣言 クレイをKOした毛沢東商法 バックナンバー

---

---