畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築：巽孝之・・・その18

日本神話を脱構築する：畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築：巽孝之・・・その18

「いくら人間そっくりでも畢竟ヤプーは類人猿にすぎず、ひとは矮人決闘（ピグミー・デュエル）に興じ、畜人焼肉（ヤップ・ステーキ）に舌鼓を打ち、精気吸引具（ホルモン・タバコ）を喫って若返りすることができる」（正編、七三頁）。この思想は完結編にいたるとさらに練り直され、ヤプーという猿の「模倣癖」（完結編、三〇四頁)が「劣等人種の存在を前提に人類文化を発展させるというヒトラーの発想」（同、四二九頁）とからんでいたにちがいないことが主張されている。ヒトラーがイース文化を知っており、ヤプー白神崇拝に習熟していたこと。そればかりではない、イースにおけるキターン大学のドイツ系歴史学者パイパー教授はさらに、ヒトラーによるユダヤ人大虐殺にしても、ユダヤ系主人に対して反逆した「悪いヤプー」がイース的心理制御技術を駆使してヒトラーを操った結果であるというショッキングな学説を浸透させており、ヤプーにすべてを責任転化することでドイツ系イース人の意識全般から歴史的罪悪感を除去しようと試みたほどである（同、四三〇頁)。

・・・畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築：巽孝之より・・・続く

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