都市出版社版『家畜人ヤプー』(1970年発行)

日本神話を脱構築する:畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之・・・その24

だからこそ、沼正三はクラーク批判として『家畜人ヤプー』執筆に赴いたのではないか。それも、クラークが編み出した因果律脱構築の手法を搾取しつつ、あくまで日本的神話・民俗学のコンテクストにおいて再利用してみせるという計略によって。このことは、すでに天照大神をはじめとする国生み神話のヤプー学的形成において検証したとおりだ。さらに傍証を重ねるならば、クラーク的技法に取り憑かれた沼正三は、オーバーロードとしての悪魔に対抗すべき民族的イメージとして何かを提出しなければならないと画策し、その結果、典型的なヤプーとして河童の例を挙げている。日本的民間伝承でいう河童、それはヤプーを水中自転車として生体改造した典型にすぎず、たまたまイース人が時間旅行したさい携帯し、たまたま古代地球の河川にはぐれた彼らが伝説に残ったにすぎないというわけだ。そもそも河童という名称にしても、推薦試作品第一◯番目ゆえにギリシャ語で「カッパ」と呼ばれたのが起源とされる。クラークにおける悪魔がヨーロッパ中心主義の「未来の記憶」だったのと同じく、沼正三においては河童こそは日本民族家畜化という「未来の記憶」としてふさわしい(ちなみに、作者が「沼正三」というペンネームをもつのも、河竜の生息圏転じて河童としてのヤプーを愛するがゆえではなかったか)。じっさい、再び小松和彦氏によれば、河童という民族イメージそのものが、じつは「川の民」すなわち下級の治水・土木・建築労働者たちの機能を中心に生成したという(前掲『異人論』、二四六~二五九頁)。ここから読み取れるのは、八百万の神と同じく、河竜という妖怪もまた、民俗的日常のテクノロジカルな要請と無緑ではなかったという歴史である。だが、沼正三はさらにたたみかけるかのように、河童としてのヤプーを基点として、逆にヨーロッパ的民間伝承を脱構築するというダイナミックな想像力を展開していく。「上半身女体で下半身が魚体という人魚は、緑いカッパを脚にはさんで波間に遊ぶイース女性・・・・・・の上半身の水中服を裸女、下半身の模様を魚尾と誤認したものと思われる」(『家畜人ヤプー』正編、二八八頁)。

・・・畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之 より・・・続く

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