第一のダブルは異母兄アロイスだった!(2)

『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

ここで博士は、まだはっきり呑みこめない中田のために、手元の紙片にヒトラーの家系図を書いて示してみせた(表1)。

「アドルフ・ヒトラーの父親、アロイス・ヒトラーは税関の監督官だったが、生涯で三回結婚している。最初に結婚した妻は一四歳も年上の女だったが、子どもを作らずに離別した。次にフランツィスカ・マッツ・マッツッスベルガーなる女性と結婚し、まず男の子をもうけて、これをアロイスニ世と命名した。次に女の子、アンゲラが生まれた。このアンゲラの娘が、後に自殺したゲリ・ラウバルだ」

「ヒトラーとの愛情問題が噂された、実の姪ですね」

「そうだ。さて、フランツィスカは肺結核で死亡したので、今度は自分の姪にあたるクララ・ペルツルを妻に迎えた。

彼女は彼との間に全部で六人の子どもを生んだ。そのうち四人は幼いうちに死んでしまい、アドルフと、二つ違いの妹パウラの二人だけが成人した。長男であるアロイスニ世と、異母弟のアドルフとは、ずっと一つ屋根の下で暮らして成長した。しかし、父親のアロイスがあまりにも専制的なものだから、息子のアロイスニ世は一四歳の時に家出し、父親が死ぬまで帰ってこなかったといわれている」

「すると博士は、そのアロイスニ世が密かに戻ってきて、異母弟アドルフ・ヒトラーのダブルになりすまし、実体ヒトラーの身替わりに死んだというのですか?」

「そういうところだ。頭文字も偶然A・Hで同じだ。父親が同じだから、当然、顔も似ている。実に都合がいい」

「だったら、この写真がそのままアロイス・ヒトラー本人であるとも言えるのでは・・・・・・」

・・・・・・・・・次号更新【異母兄アロイスの放蕩の果ての姿】に続く