第一のダブルは異母兄アロイスだった!(1)

『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

中田は捻ってしまった。実物のヒトラーの徴である母斑の位置はもとより、強靱な意志を秘めた鼻や唇、耳の形まで酷似している。瓜二つといっていい。

「ここに、実体のヒトラーが一六歳の時、級友のシュトゥルムベルガーが描いたヒトラーの肖像があるが、これと比べてみても分かる。どうだね?」

若い男の顔を横から描いたスケッチが映された(写真23)。

「確かに、少年時代のヒトラーと比較しても顔の輪郭、耳の形など、そっくりですね」

「そうだろう」

これまで、数々のヒトラーの写真から、影武者(ダブル)の存在を明らかにしてみせた川尻博士は、奇想天外な自説に中田が同意したので、満足そうに頷いた。

「私も、この写真を見た時は愕然としたよ。あの、左側に撫でつけた独特の髪形をしていないから咄嗟には分からないが、ヒトラーの父親が禿頭で、息子アドルフもその遺伝を受け継いでいたことを知っていれば、これが六〇歳になった実体のヒトラー以外の何者でもないことが分かるはずだ」

中川は興奮を抑えて質問した。

「ところで博士、この写真の人物が実体だとしても、彼は別人として身を隠していたわけでしょう?ここに写っている男は表向きはどこの誰なんですか」

「ああ、アドルフ・ヒトラーの異母兄、アロイス・ヒトラー二世だということになっている。この写真は一九五〇年ごろ、アロイスニ世本人が、妹のバウラに送ったものだ」

「この写真をどこで見つけたのですか?」

「なに、秘密でも何でもない。ジョン・トーランドの『アドルフ・ヒトラー』の上巻に、家族の写真とともに掲載されているのさ。しかし、この写真の重要性に気づいたのは、私だけちしいがね・・・・・・」

・・・・・・・・・次号更新【第一のダブルは異母兄アロイスだった!(2)】に続く