劇画最新版発刊に寄せて一一一残念ながら名乗り出て・・・天野哲夫(沼正三):1982年11月15日・記
永いこと、別に私は或る小説の構想を温めていた。架設人格の創造が成功してみると、急に意欲が高まった。その構想を骨組みし、肉づけし、ストーリーの展開と夢を語らい、血を通わせる上での知恵をお借りした向きも何人かある。学識豊富なK氏もその一人であった。これが『家畜人ヤプー』として結実する。読み人知らずの歌あれば、書き人知らずの小説があっても然るべきではあるまいか。斯くの如き作品よ、生れよかし、の自らの待望もある。
贅言重ねる余白がない。実の作者であることを名乗らざるを得なくさせた『諸君!』https://yapou.club/archives/402誌の心ない功名心が、折角の面臼い夢をつぶしてしまったのが残念でならない。
(1982年11月15日・記)
・・・了