沼正三 自筆原稿:『最初の家畜は人間だった』

康芳夫、沼正三(『家畜人ヤプー』原作者)を語る(4)

沼さんには作品を書き上げた達成感とともに、できればパブリックに出したい気持ちがあった。僕が話しに行ったことは渡りに船というか、表向きには「あまり大袈裟にしたくない」って言ってたけど、僕の説得もあったし、本人も潜在的にそう思ってたと思います。

非常にスケールの大きな、奇想の作品ですよ。これは三島も同じこと言ってるんだけど、僕は三島にも毛唐に対するコンプレックスがあったと思うんだよ。色んな意味でね。やっぱりその部分に彼は惹かれたと思うし、それからマゾヒストと男色の気も彼にはあったと思う。彼がマゾヒストだという証明は得られてないけど、噂ではね。

『家畜人ヤプー』を読んで、本来的には右翼である彼が激怒してもおかしくないわけだけど、もっと大きな問題で、白人対日本人。それから、マゾの世界。究極の快楽。「大変な文学だ」って、三島が言ってる程のものかなと僕は最初疑問に思いましたけど、三島はとにかく「そういう問題じゃないんだ」と。

だから三島が推薦文を書いた時、随分右翼が非難したけど、彼は「だから君達はダメなんだ」と、徹底して右翼を批判した。「もっと文芸作品に対し大きな考えを持ちなさい」って、それは彼の偉いところですよ。

・・・『虚人と巨人 国際暗黒プロデューサー 康芳夫と各界の巨人たちの饗宴』より抜粋

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