虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より
本間興業にしてやられる(2)
本間興行はまず、神がソ連に続いて中国に接近したことに目をつけた。先に述べたとおり、ソ連と中国の関係は年々悪化していっている。そこで、彼らは「アートフレンドアソシエーションの神彰はソ連のスパイであるだけじゃなく、中国のスパイでもあるらしい」という噂を広めていった。当時、神彰を「赤い呼び屋」といっていた連中には神が「ソ連のスパイじゃないか」などという人間もいたが、決してAのことは知られていなかった。単なる軽い噂にすぎなかったのだ。もちろん、本間興行も彼のことを知ろうはずがない。単純な神に対する中傷行為である。ここで故Aの名誉を守るためにひと言はっきりさせておく。彼は共産主義者ではなかった。何らかの事情でシベリア抑留中にKGBにおどかされ、やむをえず「スパイ活動」をしたというのが真相であろう。
そして、その噂を日本の各界に流しておきながら、次に彼らはソ連政府に近づき「アートフレンドの神彰はどうやら本当に中国のスパイらしい」とか「法外な金品を中国政府に献金しているようだ」などとあらゆるルートを使って政府高官に吹きこんだようだ。最初は相手にしていなかったソ連政府も執拗な彼らの戦略に徐々に猜疑心が高まっていく。そして、決定的だったのは彼らがつかんだ神彰の財務事情だった。
・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く
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興行という虚業の世界は一枚底板をめくると地獄が顔をのぞかせているようなところである。当然、神経がタフでないとやっていけない仕事である。だから真の虚業家は血と汗と胆の匂いがする https://t.co/U9FmCFdp3p #康芳夫 pic.twitter.com/UderOhmK3b
— 康芳夫(国際暗黒プロデューサー) (@kyojinkouyoshio) November 17, 2021
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