虎と空手武道家の死闘ショー:東京中日スポーツ(昭和52年1月6日)より抜粋

”呼び屋”の康芳夫が企画した”虎(とら)と人間の死闘ショー”に対し四日、スイスの世界野生動物保護協会などから”待った”がかかったが、康氏は、五日東京・半蔵門のダイヤモンドホテルで「ショーは予定通りやる」と、大見えを切ってみせた。

虎と空手武道家の死闘ショー:東京中日新聞(昭和52年1月6日 木曜日)

虎と空手武道家の死闘ショー(14):トラの爪は出刃包丁

そしてある日、決定的な事件が起こってしまった。その日に見た光景は、いまでも私の瞼に焼きついているそれほど強烈な出来事だった。

いよいよ試合を.週間前に控えた午後のことだった。試合に向けた最後の調整をかねて、強力な首輪を鎖でつないで柱に固定したトラに、凶暴なドーベルマンを二匹けしかけた。ドーベルマンは獰猛な犬で何も恐れず飛びかかっていく。しかし、トラは本能的に自分の身に危険を感じた時か、空腹時に獲物を狙う時しか、自分からは襲わない。その日のトラは食事も終えて、満腹で眠そうな顔をしていた。そんなトラへおかまいなしに二匹のドーベルマンが牙をむきだして飛びかかっていった。しかし、トラはゆったりとした動きで「何で俺に向かってくるんだよ」とでも言いたげな眼をしている。緩慢な動きで闘うそぶりも見せなかった。そして、飛びかかってきたドーベルマンを面倒くさそうにはねのけた。その瞬間、二匹のドーベルマンは「キィン」とひと言、奇声を発したかと思ったらあっという間に数メートルもぶっ飛んでしまったのだ。

・・・虎と空手武道家の死闘ショー:続く