虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より
実感主義−−−身体で覚える(2)
私は神と仕事をするようになって、この裏世界の問題以外にも、「呼び屋」という仕事の虚実の境目や収支の内実が徐々にわかってきた。派手に現金が飛びかう世界だが、経営的には収支のアップダウンが実に激しい仕事なのだ。たとえば一◯回興行を組んで、九回黒字でも一回大穴をあければ赤字になってしまう。また、逆に九回赤字でも、一回大きく成功させれば黒字になってしまう。それほど一寸先は闇、といっていい不安定きわまりない世界なのだ。まさに、一発勝負、毎回カジノで大金を張っているような仕事なのだ。しかし、その、大金を握ってデイーラーと向かいあうような緊張感、体を張って生き残る独特の世界こそ「呼び屋」の醍醐味というものだろう。
そもそも、紋切り型の価値観でしかすべてを判断できないような日本社会に反感を抱いて生きてきた私である。戦後の闇市も整理され、社会は徐々に高度成長の波に乗って、日本も企業社会へと変貌をとげつつあるある時代だった。が、その時代の流れに歯向かうように一匹狼の人間たちが激しく牙をむきあって生身で勝負し、裸でぶつかりあう興行の世界に何ともいえない魅力を感じはじめていたのだ。
・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く
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昔、神彰という伝説的な興行師がいた。一九六〇年代に、ソ連のボリショイ・サーカスを始め、当時ではまだ珍しかった海外の呼び物を数多く催し、呼び屋の風雲児としてマスコミで話題になった人物である。 #康芳夫 pic.twitter.com/AXDBpq5vSm
— 康芳夫(国際暗黒プロデューサー) (@kyojinkouyoshio) December 16, 2019
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