虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

人生は芸術なり---御木徳近師の支援(1)

実は、この「大西部サーカス」に前後してもう一つ、アートフレンドアソシエーションは大きな赤字興行を行っていた。それは、神彰が採算を度外視して開催した「大シャガール展」だ。

神彰という男は、相場師としての度胸とはったりを持ちながら、反面、芸術や文化事業に情熱を傾けるといった繊細さを持ちあわせていた。そこには、旧制中学しか出ていない、彼独特の文化・学歴コンプレックスがあったのだ。それと、同時に子供の頃から「画家になりたかった」という挫折した夢への執着心もあったのだろう。

「本当は俺は絵描きになりたかったんだ」と私によく語っていた。中でも特にシャガールに憧れていた。そんな彼の個人的な強い思い入れでこのシャガール展は実現したのだ。

これは、採算は別として大好評だった。世界最大のシャガール展、というタイトルにもふさわしく四五一点もの作品を世界一四か国の個人コレクターや美術館から集めてきたのだ。中にはいままで絶対門外不出だった作品なども含まれて、評論家たちも絶賛してくれた。神は企画から実現まで七年近く準備をかけていた。彼の思い入れがいかに強かったかがはかり知れるだろう。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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