戦後最高のSM奇書「家畜人ヤプー」の覆面作家と名指しされた 東京高裁 倉田判事の空しい反論(2)
昭和三十一年の十二月号からSM雑誌『奇譚クラブ』に、二十回にわたって連載されたこの小説については、もはや多言を要しまい。
『近代日本文学大事典』に、文芸評論家の奥野健男氏がこう書いている。
<この長編はマジヒズムの極致ともいうべき空想的作品で、白人の美女のため便器や靴や小人や愛玩機械に嬉々としてなる家畜人の姿を豊富な幻想と歴史的教費やSF的知識で描いている。三島由紀夫、埴谷雄高、渋沢龍彦、奥野健男らが注目、絶賛し、幾多の毀誉を経て昭和四十五年一月都市出版社から加筆されて刊行、ベストセラーになった>
作者の名は沼正三。正体不明の覆面作家だったのである。
ところで、『諸君!』十一月号が、発売になると、意外なことに、突然「私が沼正三です」と名のりを上げる人物が現われたのである。
・・・次号更新に続く