では、この写真は何を意味する?

滅亡のシナリオ:写真⑬1933年、はじめてラジオの全国放送で演説するヒトラー/写真⑭ヒトラーの身長は170センチ、ムッソリー二は168センチ

滅亡のシナリオ:写真⑬1933年、はじめてラジオの全国放送で演説するヒトラー/写真⑭ヒトラーの身長は170センチ、ムッソリー二は168センチ

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

ここまできて、川尻博ヒはいったんスライドを切った。また手が煙草に伸びる。

「どうだい。これまで見せた写真で、共通したところが分かったかね」

「そうですね。・・・・・・これらの写真のヒトラーは、まず外斜視で、直立すると首が右に傾き、それを直そうとすると体が左に傾く癖があります。右肩に異常がある様子は見えません。肥満傾向が強く、最終段階ではどんどん老人っぼくなりました。・・・・・・それと、明らかに威厳が不足してますね。傍にいる部下も、あまり畏怖した様子を見せていません」

「そうだ。君も医師になれる素養があるぞ。医者というのは、視診といって、患者の外見を見ただけで、だいたいの病状を把握できないといけない。名医は診察室に入ってきた患者をひと目見て、だいたいの性格から病歴、健腹状態を察知するんだ」

そう言いながら、博士はまた一連のスライドを映写しはじめた。

「さて、これを見てもらおう。これはマイクの前に立っているやつだな」(写真⑬)

「これはまた、なんとなくインテリふうですね。紳士的というか、学者のような・・・・・・」

「そうだな。知的ではあるが、どこか線が細い。ベルヒテス・ガーデンで、高笑いしたり急に怒鳴った粗野な男と同一人物とは思えないな。こういう表情表出に弱さがある人間は、タイプとて順応性があり、抑鬱傾向の人間なんだ。それと、私は頭の形が長頭だと思うね。肥満傾向は感じられない。比較するものがないから分からないが、やや細身で背が高そうだろう?」

「そう言われれば、そのような気もします」

「これはムッソリーニと一緒の写真だ。こうやって見ると、身長はどうだろう」(写真⑭)

「ムッソリー二よりずっと背が高そうですね・・・・・・」

「ところが、ムッソリー二は一六八センチ、ヒトラーは一七〇センチでたいして変わらなかったんだな」

「おかしいですよ。遠近差を勘定に入れてもヒトラーのほうがはるかに背が高いです。肩の位置がぜんぜん違う」

「威厳はどうだ?」

「あまり感じられませんね」

「ムッソリー二も、『ヒトラーは顔色が悪く、何か病気でも持ってるんじゃないか』と言ってたそうだ」

「そのかわり、帽子はキチンと乗っかってますね」

ここで中田はちょっと混乱した。最初に見せられた一連の写真は、なんとなくヒトラーのダブルではないかと思われたが、今度のスライドの写真も妙にヒトラーらしくない。

すると、川尻博士はまたまた一連のスライドを用意しだした。

・・・・・・・・・次号更新【”総統”と呼ばれるにふさわしい男】に続く