石ノ森章太郎らが描いた「家畜人ヤプー」全4巻が電子書籍に(2014年4月1日)

石ノ森章太郎らが描いた「家畜人ヤプー」全4巻が電子書籍に(2014年4月1日)

隠遁作家のパフォーマティヴ:畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之・・・その6

では、隠遁の修辞法は具体的にいかなる効果を発揮するのか。

とりあえず『家畜人ヤプー」の記憶をリフレッシュするところからはじめよう。西暦一九六?年のある日、西ドイツの山麓で乗馬を楽しむ「大学の女王」クララ・コトヴィッツと彼女の婚約者である日本人留学生・瀬部麟一郎が、四〇世紀の未来・外宇宙から不時着したUFOと邂逅するが、ある誤解がもとで、彼らふたりともその未来社会へ連れ去られる。その誤解というのは、UFOの主であるポーリーン・ジャンセンと会ったとき、たまたまクララは乗馬服に乗馬鞭といういでたちであったが、麟一郎のほうがちょうど渓流を泳いでいたこともあり、全裸であったという事情に起因する。というのも、ポーリーンの暮らす二〇〇〇年後の白人女性専制社会イース国(EHS=百太陽帝国(ジ・エンパイア・オヴ・ハンドレッド・サンズ))では、黒人は奴隷としてまだ人類扱いされているものの、黄色人すなわち日本人は人類どころか家畜の地位におとしめられていた。

・・・畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之 より・・・続く