康芳夫

モハメッド・アリ興行ポスターの前で

修羅場で学ぶ「非常識な力」

大学卒業後、神彰率いるアートフレンドアソシエーションに入ってから、神と共にやってきた虚業ビジネスの数々。そこで味わった幾多もの修羅場の体験は、その後、神との訣別してからの仕事にも大いに役に立った。

そこで学んだのは、修羅場を乗り越えるには、ある意味、とんでもない「非常識な力」が必要であるということだ。修羅場というのは日常を外れた世界である。そこは常識やときには法律さえも通用しない治外法権の世界なのだ。

それゆえ、その世界での振る舞いは必然的に常識の枠を超えたものになってくる。考え方、決断力、行動力、すべてが通常の次元とはケタが違ってくる。常識的な思考や行動だけで立ち向かっていけば、修羅場が持つ圧倒的な風圧に簡単に吹っ飛ばされてしまうだろう。

修羅場において人は人が作った枠をいったん超えるのである。そこはまさに先に述べたように「本能的実存」の世界そのものである。そこで呼吸できる術をつかんだ者だけが修羅場から再び生還できる。

・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋