虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

二つの祖国(1)

両親は大恋愛の末に結婚したので夫婦仲は非常に良かった。しかし、事実上ふたりの国は戦っているわけだ。親爺は幼少から日本で育ち、日本の教育も受けているのでまったく日本を敵対視しているということはなかった。しかし、当然、国籍は中華民国。父の父、すなわち祖父は重慶に逃げのびて日本軍と戦っている。また、大使館の侍従医だった関係で大本営の情報操作が施された発表とは別に、中国大陸での実際の戦闘状況を直接大使などから聞いていたので、冷静な分析もできた。

家の中で親爺が「この戦争で日本は絶対に負ける」と母親に向かって断言すると、母親は「そんなことはない。日本は必ず勝ちます」と真顔で反論する。夫婦いがみあってけんかしているわけではないが、お互いゆずらず言い争っている。そばで見ている私は本当に複雑な気持ちだった。まさに、山崎豊子の『二つの祖国』という小説を実体験しているような当時の記憶がいまでも胸に焼きついている。幼少の私の頭は完全に混乱していた。「チャンコロ」とさげすまれて呼ばれたいやな思い出と同時に、その悔しさを晴らす心のよりどころともいえる両親のどちらが真実なのか。どちらを信じればいいのか。この時の、心を二つに引き裂くような複雑な思いはその後、ずっと私の胸の深奥に一種のトラウマとして残ってしまったのだ。しかしながら私の精神は、後述するように最終的にはいかなる逆境、いかなる思想にも「侵略」され、疎外されることはない。今年六八歳になる「我が人生」をふりかえって、そのことに関する「確信」はますます強いものになってきた。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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ネッシー捜し湖畔に到着:朝日新聞 朝刊(9/10)

ネッシー捜し湖畔に到着:朝日新聞 朝刊

ネッシー捜し湖畔に到着:朝日新聞 朝刊「ネッシー捜し湖畔に到着 日本隊一行が記者会見」

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