虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より
中国服で構内を闊歩(3)
おまえはニセ学生だろう、とでもいわんばかりの剣幕だ。しかし、私はいつも冷静に受けながし、相手にしなかった。どんな格好をしていようと、私はまぎれもない東大生だからである。
そして、この私にからんだ体育会系の学生たちは、彼らの想像の領域をはるかに超えた私独特の「ハッタリ」にすっかり幻惑され、次の年にはみごとに私の用心棒のように手足になって働いてくれることになる。
高校時代から学校を職場のようにして金を稼いでいた私だが、これも大学時代により計画的で巧妙な仕事へと発展した。まさに、大学には毎日、金を稼ぎに行っていたような気がしていたのだ。私にとっての東大は、国家公務員をめざしたり、むずかしい勉強をしてみずからの権威を高める場では毛頭なく、冒頭に記したとおり、まさに「退屈しのぎ」をかねたさまざまな金もうけの仕事を実践させてくれる場所だったのだ。
・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く
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「兄貴、康さんを知っておられるでしょう」
私の依然の舎弟で、今出も渡世に励んでいる男が、ホテルの宴会場の人混みの中を縫うようにして近づいてくると、そう訊いたのは、昭和六十一年の晩秋のことだった。初めての単行本が好調に売れたので、版元の出版社が全国的に協力してくれて、「安部譲二の再出発を祝う会」というのをやった時のことだ。
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