石ノ森章太郎らが描いた「家畜人ヤプー」全4巻が電子書籍に(2014年4月1日)

石ノ森章太郎らが描いた「家畜人ヤプー」全4巻が電子書籍に(2014年4月1日)

---

家畜人ヤプー登場人物&ヤプー図鑑:石ノ森章太郎(監修&作)「劇画家畜人ヤプー」電子版より

【瀬部麟一郎(せべ りんいちろう)】:物語の主人公。日本人ゆえに家畜人ヤプーに改造されていく。未来社会で去勢され、クララの小水を浴びせられ、家畜人としてクララに使える宿命。ドイツに留学しているときに、クララと恋人となり、結婚を約束していた。円盤が墜落した時、水浴中。クララの身を案じたため裸のまま円盤の中へ。そのため、搭乗者のポーリーンにヤプーと誤解される。円盤は、未来からきたタイム・マシンなのだ。ポーリーンは、クララと麟一郎を未来社会に連れていく。

【クララ・フォン・コトヴィッツ】:物語のヒロイン。麟一郎の恋人だったが、未来社会のイースに連れていかれ、その社会の常識に染まっていく。すなわち、白人が人間で、日本人は家畜というものである。クララはドイツ人なので人間、麟一郎は家畜というわけだ。家畜と婚約していたことを恥じ、後悔し、やがては、去勢され、改造された麟一郎をペットのように、リンと呼ぶようになる。

【ポーリーン・ジャンセン】:もう一人のヒロイン。麟一郎とクララの人生を変えてしまう人物。未来社会のイースから、誤って現代のドイツにタイム・マシンである円盤で墜落。連載当時の60年代に墜落となっている。イースではジャンセン家は、侯爵。ポーリーンは、検事長。といっても、SFなので、シリウス圏の検事である。麟一郎を原ヤプーと誤解し、その原ヤプーを愛しているクララの目を覚まそうとして、未来社会のイースに連れていく。途中で、誤って60年代に墜落したことを知るが、もはや、後戻りはしない。

【猟犬ニューマ】:円盤の中で衝撃牙で麟一郎を咬み、全身を麻痺させる猟犬。ポーリーンが飼っている。ネアンデルタールハウンド、つまり、古石器時代人狩猟犬である。ヤプー。犬族大学を首席で卒業。

---

隠遁作家のパフォーマティヴ:畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之・・・その7

そして原(ロー)ヤプーは、皮膚強化処置を施されて裸でも暮らせるような肉体になっている。だからポーリーンは、クララと麟一郎との初対面に際して、自分が過去の地球に不時着したという可能性も忘れ、たんに同時代人が原ヤプーを連れているにすぎぬものと思いこんだのだ。彼女が連れていた畜人犬ニューマにしても、麟一郎が服を着ていなかったためについ原ヤプーと誤解し、噛み付いて全身を麻痺させてしまう。

すべてのはじまりは、右の誤読にあった。ところがポーリーン側は誤読を訂正するどころか、むしろそれじたいを正読にしてしまおうと、彼らをイースへ同行し、クララを自分と同じ貴族に、麟一郎自身を家畜人ヤプーに仕立てあげる好計を思いつく。物語はだから、ごくごく単純化してしまえば、このクララと麟一郎が運命の皮肉によって婚約者同士から主人=家畜関係へと関係を転化させていくプロセスを、一見スウィフト的な旅行記の体裁へまとめあげたものといってよい。

・・・畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之 より・・・続く