虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

助監督のアルバイト(2)

五月祭でのトラブルを契機に、私は石原慎太郎ととても親しくつきあうようになった。当時彼の住んでいた芝の高級マンション「日活アパート」にも、ひんぱんに遊びにいったりした。彼も一般の東大生の常識とはかけ離れた私の発想と言動に「なかなかおもしろいやつだ」と、気に入ってくれた様子だった。

そんなある日、彼が「今度、映画の監督をすることになったよ」と話してくれた。これは「二十歳の恋」という五か国合作(日、仏、伊、独、ポーランド)のオムニバス映画で、その日本版を彼が監督することになったのだ。さっそく、私は「助監督で使ってほしい」と願いでた。彼は二つ返事で「いいよ」とこころよく了承してくれた。

撮影は毎日が刺激的でおもしろかった。助監督といってもサードなので使い走り程度だったが、ほとんど学校には行っていない私にとって「退屈しのぎ」としては十分すぎる「仕事」だった。ちなみにフランス版は、監督フランソワ・トリュフォ、ポーランド版はアンジェイ・ワイダという超豪華メンバーだった。

ストーリーは、非常に貧しい工員が恋をしてそれがうまくいかずに死んでしまう悲恋物語。毎朝、江東区の下町の工場で朝六時ぐらいからロケがスタートした。大学にも行かず、真冬の三か月間、遅刻もせずに通った。とても楽しい思い出だ。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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