虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

最初のゲートをくぐった−−−ソニー・ロリンズ、アート・ブレイキー(1)

こんな具合に、私は契約書の一言一句をまさに英語の辞書や法律専門書と首っぴきで血みどろの思いで調べあげたのだ。アメリカの弁護士を相手に、大学出たての私が対等に英語の契約書を作成したのだから、しかもその後、いろいろなケースの契約書を作成し、実地経験をびっしり積んだので、いまでも私は国際契約には自信を持っていて、下手な日本の弁護士に負けないという自負がある。

私を完全に信頼して仕事をまかせてしまった神は、さらに契約するのにひとりでアメリカに行ってこい、という。入社早々、契約書を作れだのアメリカに出張しろだの、さすがの私も若干のプレッシャーを感じていた。しかし、当然、それぐらいに扱われたほうが自尊心の強い私には合っていることも充分認識していた。もちろん、アメリカにも非常に興味を持っていたのだ。

しかし、いざ、パスポートをもらおうと思って中華民国大使館に行くと「ちょっと来てください」と別室に呼ばれてしまった。何だろうといぶかりながら話を聞くと、「あなたには事情があってパスポートは発行できません」と職員が言う。なぜだ、と私が問いつめると隣から鋭い日つきの男が出てきた。そして、私に一枚のコピーを見せたのだ。どうやら日本の新聞のコピーらしい。最初、何だかその意味がわからなかったが、その記事をよく見て私ははっと思いだした。学生時代、毎日新聞に投稿した記事だったのだ。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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