第四章 ついにクレイが来た!

マフィアとの交渉を決意

虚業家宣言:康芳夫

ニューヨークは前と少しも変わっていないような気が私にはした。マンハッタンの通りは、相変わらず人と車でゴッタ返していた。コンクリート・ジャングルを四角く切り裂いている空はぬけるように青かった。それは、まるで、私自身の心を反映しているようでもあり、また、私を歓迎しているようでもあった。

前のときの契約書に、海外第一戦を行なうときには十分考慮を払うというメモランダムがあったし、東京を立つ前に入れた電話でハーバート・モハメドの口調が割と楽観的だったので、ノンビリしていた私は、ニューヨークに着いて度胆を抜かれた。

クレイの回りには、すでに世界中から十人以上のプロモーターが押しかけていた。しかも、イギリスのジャック・ソロモンを初めとして、どいつもこいつも、名うてのスゴ腕ばかりなのである。

十月二十六日のジェリー・クォ-リー戦、十二月七日のオスカー・ボナベナ戦、七一年三月八日のフレーザー戦など、着々とクレイの試合スケジュールが決まりつつある。事態は容易ならぬものであった。おとなしく順番を待っていたりしたら、優に四、五年はかかってしまうことになっていた。「しまった」とホゾを噛んだがもう遅い。

とにかく、何がなんでも、この順番をかきわけて前に出る必要がある。

私は強引に割り込んでいった。

ボクシング界は、日本でもそうだが、むかしから、暴力組織とのつながりが深い。アメリカの場合はとくにマフィアがからんでいる。彼らにとって、世界ヘビー級のチャンピオンといえばたいへんな財産、金の玉子を生む鶏にも等しい。クレイが徴兵拒否でタイトルを剥奪されたとき、WBAがすぐにアニー・テレルを新チャンピオンとして認定したのも、裏でマフィアが糸を引いていたというのは公然の事実だ。

「余り強引なことをやると消されるよ」

と真顔で忠告してくれた友人もいる。

だが、今や、そんなことを危惧している段階ではなかった。

将を射んとせば、まず馬を射よ、のヒソミにならって私はハーバートを徹底的に攻めることにした。

・・・・・・次号更新【”師匠”神彰がライバルとして出現】に続く

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『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』真の虚業家の使命は何よりも時代に風穴を開け、閉塞的状況を束の間でもひっくり返して見せることである。「国際暗黒プロデューサー」、「神をも呼ぶ男」、「虚業家」といった呼び名すら弄ぶ”怪人”『康芳夫』発行メールマガジン。・・・配信内容:『康芳夫の仕掛けごと(裏と表),他の追従を許さない社会時評、人生相談、人生論などを展開,そして・・・』・・・小生 ほえまくっているが狂犬ではないので御心配なく 。

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