この世の妙味は虚実皮膜の間:毎日新聞(2009年10月24日)より抜粋

この世の妙味は虚実皮膜の間:毎日新聞(2009年10月24日)

精神を究極の柔らかさまでもっていく

悪魔をも受け入れるほどの器を持っていないと虚人にはなれない。精神がそこまで柔軟でないと、世間を真にびっくりさせるようなことはできない。

虚人のみならず、どんな仕事においても精神は柔らかければ柔らかいほどいい。柔らかい精神があればたいがいのことは上手にこなすことが可能になるし、優れた発想も次々と生まれてくる。柔らか過ぎることが組織のルールに抵触したり、人間関係上のトラブルに発展することはあっても、基本的に柔らか過ぎて困ることはないはずである。

ところで、悪魔をも受け入れてしまうほどの器とは、正確に言うと「究極の相対主義」を原材料にして作られる。精神が持ちうる最高度の柔軟性というのは何よりも、「究極の相対主義」から生まれるのである。

もちろん、世の中はすべてフィクションであるという私の見方や感性もこの徹底した相対主義から出てきたものである。

・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋