レフェリー・アリ、呼び屋・康氏・・・役者ぞろい!!:東京中日スポーツ(昭和54年1月26日)

アミン大統領(6):冷蔵庫の中

そしてひと月ほどして再びウガンダを訪れた私は、また大統領執務室に招かれたが、ここでさすがの私も眼を疑うようなものをアミンから見せられてしまったのだ。最初に訪れた時もこれは何だろう、と不思議に思っていたのだが、アミンの大統領執務室の近くの倉庫にばかデカイ冷蔵庫が置いてあったのだ。一度目の時はそれについて何も言わなかったアミンが、二度目に行った時、その冷蔵庫の扉をあけて見せてくれたのだ。

中をあけると雲のようなまっ白な冷気が流れおち、そこには雪だるまの頭のようなまっ白に凍った丸いものがぎっしり詰めこんであったのだ。ぎょとして目を見はると、これはどう見ても人間の頭にしか見えない。アミン大統領は驚く私のほうを見て不気味な笑みを投げてよこした。これは何だ?という私の質問にも、ただ不気味に薄ら笑うだけ。そしてただひと言、「これは我々の習慣だ」とだけ答えたのだ。その魔女のような笑みの中にひそんだ眼光の鋭さに、一瞬、背筋が凍りそうになったのをいまでも鮮明に覚えている。

さすがの私もその夜のディナーはのどを通らなかった。まずいの何のという問題ではない。まさに豪華な皿に盛られた肉が人間の肉に思えてきたのだ。あの白いかたまりが目をむいて迫ってきそうで、吐き気をもよおし、あわててトイレに駆けこんだ。このアミンというやつは、やはり「人食い大統領」という噂に恥じない、凶暴で野蛮な男だ、ということを肌身で感じてしまったのだ。

・・・アミン大統領:続く

アミン大統領 VS 猪木 レフェリーはアリ:スポーツニッポン(昭和54年1月26日)