逆ユートピアの栄光と悲惨・・・11
白人たちは、高度の文明の恩恵に浴し、ヒエラルキー最上位にあって、黒奴やヤプーの奉仕にかしずかれる生活を享受している。それはそれで、充分快適な状態に違いない。しかしながら、それは、ヤプーたちの、魂のおののくような至福感とはほど遠い。支配者の地位にある白人にはあらずして、支配される黒奴やヤプーの方が真の恍惚、真の至福感に恵まれているところに、この小説の最大の逆説がある。
はっきり言って、これは完全な逆ユートピアなのだ。主体は、被虐者たるヤプーの側にある。鞭をふるう者と跪く者、という図柄の外観に瞞されてはいけない。鞭は、被虐者が引き寄せるものである。著者沼正三がヤプーの側に自らを措定していることは、今さら言うまでもあるまい。シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、嘗てマゾヒズムの本質を、端的に「生気のない物体として、自己を廃棄しようとする努力のうちで、自己の主観性にたち戻ること」と定義したが、家畜化し、道具化し、機械の部品化したヤプーの群は、物化(オブジェ)というマゾヒストの願望を十全に達成した、理想的状態のうちにあると言わなければならない。
・・・次号更新【逆ユートピアの栄光と悲惨:家畜人ヤプー解説(前田宗男)より】に続く
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