都市出版社版『家畜人ヤプー』(1970年発行)

逆ユートピアの栄光と悲惨・・・24

大空の彼方に浮かぶのは、人間の自由性の証左としての《像(イマージュ)》の巨大な集積体---想像力によって「無」の中に構築された、あの驚くべき逆ユートピアの風景なのだ。だが、その逆ユートピアと地上をつなぐひとすじの繋留索の根方を見れば、そこにはマゾヒズムの影が黒々と横たわっている。夢想の空に浮かぶ時、どんなに妖しい光彩を放とうとも、マゾヒズムは、「現

実界」にあって、飽くまでも「疎外」であり、「挫折」でありつづけることをやめない。この文章の標題に掲げた「栄光」と「悲惨」の二語は、このような、自由と宿命とがひとつに絡み合った人間存在のありように対して、私の懐いた感慨の謂である。

・・・次号更新【逆ユートピアの栄光と悲惨:家畜人ヤプー解説(前田宗男)より】に続く

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