虚業商法十カ条:第三条『決断はすばやく』
熟慮断行という言葉がある。よく考えてから断じて行なえということだろう。だが私はこの”熟慮断行”という言葉が大キライだ。
断行はいい。私もおおいに断行している。だが、虚業の世界は、食うか食われるか、生き馬の眼を抜く世界である。熟慮していたら、その間に他人に抜かれてしまう。
前に私は、注目する人物としてレセップスをあげたが、スエズ運河に関してはこんな話もある。
一八七五年、その頃、スエズ運河はすでに株式会社組織になっており、株の大半はエジプト王が所有していた。ところが、ある日、英国政府に現地の領事を通じて、エジプト王がその株を手放すらしいという情報が入って来たのである。
時の英国首相は、有名なアイザック・ディスレーリであった。
スエズ運河はドイツのビスマルクが早くから目をつけていた。もしドイツにスエズを押えられれば、英国はインド経営に多大の困難を招くことになる。これは何としても、その株を買い占めることだ。ディスレーリはすぐにそう判断した。
ところが、運の悪いことに、ちょうどその時期、英国議会は閉会中であった。英国では議会の承認なしに、こういう莫大な資金を使用することはできない。
日本の政治家なら、こんなとき、”議会が閉会していた”ことを理由にして責任をのがれることばかり考えるだろう。
だが、さすがにディスレーリである。彼は議会開会が早急には無理だと知ると、すぐに秘書官を金融王・ロスチャイルドのもとへ走らせたのである。
「株を押えるのに必要な資金を貸していただきたい」
「何を担保になさるつもりですか」
「英国政府を!」
それで話はまとまり、ロスチャイルドから借りた資金で、ディスレーリはスエズ運河の株をすべて買うことができたのだった。
もし、その時点でディスレーリが、もたもたしていたとしたらどうだろう。ビスマルクだって馬鹿ではないから、すぐに手を打ってドイツがスエズ運河を押えることになっていたろう。もしそうなっていたら、その後の世界の歴史が変わっていたかもしれない。
・・・・・・次号更新【虚業商法十カ条:第四条】に続く
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