虚業家宣言:康芳夫

虚業商法十カ条:第五条『敵をつくれ』(2)

なかでも、私が、いちばん恐いと思った”敵”は、意外に思われるかもしれないが、松下幸之助だった。

『松下幸之助を裁く』を印刷にかかった段階で、すぐに、ある大物総会屋が私の元へ飛んで来た。

「初版全部を私が買い取るから、増刷はやめてほしい」というのだ。

初版三万部、定価が四百八十円だったからざっと千五百万円である。悪い話ではない。が、私はその申し出を断わった。松下とケンカしようと心に決めていたから。大松下が頭を下げて来たのを断わる快感に酔ってもいた。

ところが、本ができ上がってから、私は松下の恐さをイヤというほど思い知らされたのである。本はでき上がったが、どこにも広告を出せないのだ。新聞社はそれまでつながりのあったところも含めてすべて広告出稿を断わってきた。それでは、と、電車の車内吊りを打診してみたが、これも同様だった。

今の時代、広告ナシで本を売るのは不可能に近い。

広告をすべて断れたとき、だが、私は黙って引っ込んでしまったわけではない。ゲリラ戦法に出たのである。

私はわざわざ京都の松下邸まで行き、その周囲に葬式の花輪よろしくズラリと立て看板を並べた。『松下幸之助を裁く』、『松下幸之助を裁く』、『松下幸之助を裁く』・・・・・・

「ザマアミロ」

私は、事務所の若い者と快哉を叫んだものだ。

だが、それもわずか半時間しかもたなかった。三十分もたたぬうちに、どこからか現われた屈強な男たちが十数人、私の目の前でその立で看板を取り払い、ヘシ折ってしまったからである。さすがに、私も口が出せず、結局、私は、このゲリラ戦でも松下幸之助には負けてしまった。

私は今でも、松下幸之助氏を、最大のわが敵と考えている。チャンスがあれば、もう一度、お手合わせしたいものだ。

・・・・・・次号更新【虚業商法十カ条:第六条】に続く

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『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』

真の虚業家の使命は何よりも時代に風穴を開け、閉塞的状況を束の間でもひっくり返して見せることである。「国際暗黒プロデューサー」、「神をも呼ぶ男」、「虚業家」といった呼び名すら弄ぶ”怪人”『康芳夫』発行メールマガジン。・・・配信内容:『康芳夫の仕掛けごと(裏と表),他の追従を許さない社会時評、人生相談、人生論などを展開,そして・・・』・・・小生 ほえまくっているが狂犬ではないので御心配なく 。

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