プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹
滅亡のシナリオ(7)
いまも着々と進む1999年への道
これが、”麻原オウム”幹部必読の教科書だ!
ヒトラーは予言が的中するように行動した!?
「そうだよ。ノストラダムスは四〇〇年後、地球の反対側、アジアで起きた出来事まで実際に見たのだ。そのすぐ前、第一章五五番もそうだ」
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「バビロニアと反対の気候にて
血の大混乱があるだろう
そのために陸も海も空気も天も不純な
もので汚染され
分裂、飢餓(きが)、占領、伝染病、混乱が起
きるだろう
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「バビロニアと反対の気候、というと、雨が降って湿気が多い土地・・・。あ、これはベトナム?」
「そうだよ」
「そう言われると、まさしくべトナム戦争の混乱を予言していますね。しかも枯葉剤のような生物化学兵器の使用まで・・・・・・」
「日本のことも、ノストラダムスは幾つも予言している。これがそうだな」
博士は第三章六番の詩を示した。
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閉鎖された寺院を雷撃が襲い
市民はその力で苦難を受ける
馬、牛、人、水は壁に触れ
飢(う)えと渇(かわ)きに倒れて最悪の時がくる
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「この詩の鍵は、”雷撃”だ。その力で、人も動物も水も影響を受ける---のだから、放射能を撒(ま)きちらす原爆だということが分かる」
「あ。そうすると、寺院というのは長崎の浦上天主堂(うらかみてんしゅどう)・・・・・・!」
「そうだ、戦争中、浦上天主堂は閉鎖されていたはずだ。その都市を象徴する教会の上で、原爆が爆発するのを、ノストラダムスはちゃんと予言している。時空をこれほどまで超越した予知能力は、たいしたものではないか」
「はあ・・・・・・」
そこでまた、川尻博士はギョロリと目を剥(む)くようにして中田に奇妙な言葉を投げつけた。
「中田君、こういうことは考えられないかね。ノストラダムスの予言が的中するように行動する者がいたとしたら・・・・・・」
中田は呆気(あっけ)にとられた。
「えっ!? そうすると、ノストラダムスの予言が的中するのは、誰かがそのとおりにことを起こしたから---ということですか?」
「そうだよ」
川尻博士は、いよいよ鋭い眼光で中田を突き刺した。
「それが、ヒトラーのやったことなのだ」
中田信一郎は、ふと不気味な気持ちになった。
(ここは精神病院だ。目の前にいる人物は、実は院長などではなく、妄想に狂った患者ではないのだろうか・・・・・・?)
「では博士。そもそも、ヒトラーとノストラダムスを結びつけて考えるようになったきっかけというのは、何だったのですか?」
中田は質問をぶつけることにした。このまま一方的に、川尻博士の現実離れした話に引きずりこまれると、迷路の中で自分を見失いそうになる。ともかく、話を自分の理解できる地点から始めたかったからだ。
「ふむ。ヒトラーもノストラダムスも、研究しだしたのは、ここ二、三年のことなんだが、そのきっかけは、私の心の中で長いこと燻(くすぶ)っていた質問の答えを見つけたかったからだ。まぁ、最初から話すと、こういうことだ・・・・・・」
博士は、また新しいピースに火をつけた。チェーン・スモーカーである。そうやってひっきりなしに煙草の煙を吐きだしながら、自分の生(お)い立ちから語りだした。
・・・・・・・・・次号更新【現代史の謎---戦勝国の没落と敗戦国の繁栄】に続く