人騒がせなクレイ(2)
「オレはグレイテスト・アリだ。ファースト・クラス以外は乗ったことがない」
ホトホト困ってしまった。
こうなれば、パンナムのファースト・クラスにすでに坐っている客のうち四人に降りてもらうほかないではないか。だが考えてもみてほしい。すでに席に坐り、シートベルトも締め、今や出発を待つだけという乗客の誰が席を譲ってくれるものか。
それでもパンナムのパブリシティ・マネージャーの協力のおかげで、やっと四人の客に降りてもらったのだから、クレイの威力たるや大変なものである。
トラブルはまだ続く。
われわれの乗った機はサンフランシスコで三十分、燃料補給のため止まることになっていた。ところが出発時間がきても、コーヒーを飲みに行ったはずのクレイが戻ってこない。どうしたんだろう。
コーヒー・ハウスにもいない。スーベニア・ショップにもいない。トイレまで探したが見当たらない。スチュワードはカンカンである。
やっと探し当てたとき出発時間はすでに二十分も超過していた。クレイは、なんと、ロビィの片隅で悠々と靴を磨かせているのだ。私は開いた口がふさがらなかった。
「どうせ、オレが乗らなきゃ、飛行機は出やしないよ」
出発遅れの理由を、クレイが乗らないからなどと機長が管制官に説明できるわけがない。後で聞いた話だが、機長は、「エンジン・トラブルのため遅れる」と言って管制官をごまかしていたらしい。
とんだエンジン・トラブルもあったものである。
・・・・・・次号更新【銀座、赤坂でのご乱行】に続く
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『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』真の虚業家の使命は何よりも時代に風穴を開け、閉塞的状況を束の間でもひっくり返して見せることである。「国際暗黒プロデューサー」、「神をも呼ぶ男」、「虚業家」といった呼び名すら弄ぶ”怪人”『康芳夫』発行メールマガジン。・・・配信内容:『康芳夫の仕掛けごと(裏と表),他の追従を許さない社会時評、人生相談、人生論などを展開,そして・・・』・・・小生 ほえまくっているが狂犬ではないので御心配なく 。
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